Shima


068
「残月・志麻」
cm xcm 2011
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.




058
「約束2・志麻」
45cm x45cm 2010
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.




053
「ちぶさ・志麻」
50cm x25cm 2009
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


来ぬ人を待っている。
昨日夜具の中で、明日は雨かと考へた。
雨が降ればあの人は、この部屋に来るのに困るだらう。
雨が降れば来ぬ人を、私は待たなければならない。

夜は明けて、空は凪いでいる。
夜に香った茉莉花(まりはな)は、秘弁を閉じて匂わない。
私は、来ぬ人を待っている。


指にも触れ得ぬあの人を、私は待ち侘びている。
細く湿ったあの指を、私は誰より欲しかった。
あなたの指を切り取って、懐にしまって愛したい。
私がそれに触れる時、だからあの人は拒むだらう。

もし私があの人を手に入れて。
あの人が私を受け入れて。
あの人の中に私の証拠を残したら、私は君を描くだらうか。
あなたを失う代償に、私は描いていると思ふのだ。

だから私は、来ぬ人を待っている。


日差しはゆっくり傾いて。
昼闇の時間になる頃に、凪いだ空は湿った風に変化する。
夜に備えて茉莉花(まりはな)は秘弁を濡らして発香する。
それに紛れて向こうから、微かにあの人の匂いがする。

あの人の微匂いは確かな足音になって、この部屋の階段を登るのだ。
湿った指がドアノブを回す時、私は今日も赦されたと思ふのだ。
画架の前に横たわる君を。
一筆ごとに梳き取って、硝酸紙(かみ)の中に写すのだ。
君の全てを梳き取れば、今日の全てが終わるのだ。

私はまた明日、赦されるだらうか。
夜具に埋もれて明日は雨にならぬかと、私は考えている。




045
「暗い水・志麻」
cm xcm 2009
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


あなたのなかの暗い水。

目を閉じる、
ゆらゆら揺れる。




041
「週末の事・志麻」
50cm x25cm 2009
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


土曜日の君を、
初めて自分のものにする。

退屈な午後。




040
「日没・志麻」
cm xcm 2008
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


もし、あなたが私を見限るなら、
その手首から先を切り取って、
あなたの形見に、私にください。

私はそれを懐に入れて、
自分の指で戯ぶのです。

時折それに頬あてて、
あなたの匂いを吸うのです。

もし、あなたが私を見限るなら。
その手首から先を切り取って、
あなたの形見に、私にください。




035
「三千日・志麻」
80cm x40cm 2007
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


君に始めて逢ってから
三千日

部屋に貼った君の下図が、
窓からの風に、ゆうらり揺れる。
描かれた指も同時に揺れて、
まるで、
サヨナラを言うみたいだ。




034
「三千日・志麻」
80cm x40cm 2007
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


・君を始めてみつけてから、
三千日。
あれから何度も描いた。
描くたびに「もう一度だけ」、
とまた強請る。

描ける事が奇跡だったではのだ、
会えない事を恨む理由は無いではないか。




031
「つれてゆく・志麻」
cm xcm 2007
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.




030
「つれてゆく・志麻」
60cm x41cm 2007
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.




もし、あなたを捕らまえて、
互いを奪い合って、
吐息を重ねて揺れ合って、
私の腕の中で果てるのを、
見届けたら、
私は、
あなたに赦されたと思うのだろう。

あなたを描きたいと懇願して、
あなたが私の前に立つ度に、
私は赦されたと思うように。




027
「あかい花・志麻」
cm xcm 2006
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.




026
「吐息・志麻」
cm xcm 2006
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


まだ触れえぬ君の両肩が、
吐息の度に微密かに揺れて、
君の微匂いがたちあがる、
君の微匂いが一息毎に、
私の部屋に満ちてくる。




025
「十数えて・志麻」
cm xcm 2006
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


本当の事を云ってしまいそふになるから、

あっちを向いて、

十、数えて。




013
「明日髪を切る・志麻」
cm xcm 2003
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.




012
「明日髪を切る・志麻」
64cm x39cm 2003
亜麻布/岩絵具/膠/墨/金泥/燻銀
sumi-ink. mineral pigments and hide-glue on linencanvas.


「君を描きたい」、
そう書いた手紙を、
何日も持ち歩いた。
君に渡す日を、焼けるような喉で探し続けた。

着て貰おうと洗ったセーターは、
曇ったせいで乾かなかった。
君の着てきたアーガイルは、
子供じみてはいないかと、
残念に思った。

そしてそれが、
私の最初の一枚になった。


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(C) Ikenaga Yasunari 池永康晟