池永 康晟 『散菊(ちりぎく)・沙月(さつき)』
本図は、「沙月(さつき)」という実在の女性を描いた美人画です。池永氏は、モデルとなる女性の特徴を描き分けていますが、どの作品にも共通した作家独特の様式美を見ることができます。
端正な顔立ちをした現代の美女が物憂げな表情を浮かべ横たわる様子を描いた本図は、その様式美を残しながら、肉筆作品とは異なる池永氏の新たな美人画の世界をご堪能いただける作品です。

部数:100部
画寸法:52.0×19.5 cm
額寸法:68.5×35.5 cm 専用額について
額仕様:約2.0kg、木製、アクリル(UVカット70%)
版種:木版画
用紙:越前生漉奉書(人間国宝 岩野市兵衛)

出版年:2016年5月
監修:公益財団法人アダチ伝統木版画技術保存財団
制作:株式会社アダチ版画研究所
納期:ご注文から1週間以内(額付をご注文の場合は20日以内)

絵 の み:100,000円(税別)
専用額付き:120,000円(税別)


『 現代の私たちは、詫び寂び以来の”萌”という新しい美意識発明の時代に生きている。
市中には萌絵が満ち溢れている、メディア、プロダクト、高官庁のポスタにまでと、日常で萌絵に触れない日は無いだろう。
嘗て其処には絵画が在った。私の少年時代には、ライトノベルはジュブナイルと呼ばれ其処には画家の手仕事が存在した。
装丁、洋菓子の箱、薬の広告には19世紀末の最後の残り香があった、幸福な時代であった。
絵画はプロダクトと近縁であったのだ、私はあの幸福な時代の再来を夢見ている。
中世邦外では享楽が為政者の物であった時代に、庶民の浮世の憂さをは晴らす目的で発明された浮世絵美人画は世界最初のピンナップであり、誇るべきプロダクトであった。
そこから受け継ぐ近代美人画と新版画は、20世紀中期のグラビアという新しいメディアの発明に駆逐されてしまった。
其れから半世紀、現代美人画の復興を掲げる私にとって、アダチ版画から頂いた共同作業は私のすべき仕事だと感じたのである。
そして其の日は伊東深水が最初の新版画『対鏡』を発表して100年後であることも、運命だったのでありませう。』

池永康晟